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第六の栄養素・食物繊維のチカラサイエンス
| 2025-09-26
腸の健康と食物繊維 —— 科学が示す「第六の栄養素」の力
腸は食べたものを処理するだけでなく、免疫や代謝、心臓血管の健康に深く関与する臓器です。成人の腸は約8mもの長さを持ち、日々の生活習慣に大きく左右されます。その腸を支える栄養素の一つが 食物繊維。近年は「第六の栄養素」として再評価され、数多くの研究がその健康効果を裏付けています。
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食物繊維の摂取量と不足の現状
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によれば、成人の食物繊維の推奨量は男性21g以上、女性18g以上とされています。しかし、国民健康・栄養調査(2022年)では、平均摂取量は約14gにとどまっており、慢性的な不足が続いています。(厚労省, 2022)

科学的に裏付けられた効果
1. 腸内環境の改善
食物繊維は腸内細菌のエサとなり、発酵分解によって 短鎖脂肪酸(SCFA: Short Chain Fatty Acids) が生成されます。短鎖脂肪酸は腸管上皮細胞のエネルギー源となり、腸粘膜バリア機能を強化すると報告されています。(Koh et al., 2016, Cell)
2. 生活習慣病リスクの低下
米国の前向きコホート研究(Nurses’ Health Study, Health Professionals Follow-up Study)では、食物繊維摂取量が多い人ほど、心血管疾患や全死亡率が有意に低下していました。(Soliman, 2019, Nutrients)
また、食物繊維は食後血糖値の上昇を緩やかにし、インスリン感受性を改善。これにより糖尿病や肥満予防にも効果が期待されます。(Weickert & Pfeiffer, 2018, Lancet)
3. コレステロール低下作用
水溶性食物繊維(例:イヌリン、β-グルカン)は胆汁酸やLDLコレステロールと結合して排出を促進します。メタ解析でも、1日10〜25gの水溶性繊維を摂取することで血中LDLコレステロールが有意に低下することが示されています。(Brown et al., 1999, Am J Clin Nutr)
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摂取の工夫と補助的な方法
食物繊維は野菜・果物・豆類・海藻・きのこ類に豊富ですが、日常の食生活だけで推奨量を満たすのは容易ではありません。特に外食や加工食品中心の食生活では不足しがちです。
そのため、食材からの摂取に加えて、水溶性と不溶性をバランスよく含む栄養補助食品を利用するのも有効です。近年はイヌリンを配合した製品が人気で、科学的根拠を背景にしたものが増えています。

〇食物繊維は「腸の掃除役」を超え、免疫・代謝・血管保護に働く多面的な栄養素
〇日本人は平均14g前後と不足気味。推奨量(男性21g・女性18g)を意識して補う必要がある
〇短鎖脂肪酸の生成を通じて腸内環境を改善し、糖尿病・心疾患リスクを低下させることがエビデンスで確認されている
〇食事+食物繊維補助食品の組み合わせが、現代人にとって現実的で効果的な戦略
腸を整えることは、「今日の快適さ」だけでなく、「将来の健康寿命」を守るための投資です。日々の食生活を見直し、科学に基づいた腸活を始めてみませんか。
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<参考文献>
厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)
国民健康・栄養調査(2022年)